北関東の企業が管理職の「プレイングマネージャー問題」を解消する方法
育成・研修

北関東の企業が管理職の「プレイングマネージャー問題」を解消する方法

#1on1#エンゲージメント#採用#評価#組織開発

北関東の企業が管理職の「プレイングマネージャー問題」を解消する方法

「管理職なんだけど、自分もプレーヤーとして数字を持っている。マネジメントをやる時間が全然ない」——北関東の中小企業の管理職から、この悩みを聞かない日はないと言っても過言ではありません。いわゆる「プレイングマネージャー」の問題です。

プレイングマネージャーとは、自分自身も担当業務(プレーヤーとしての仕事)を持ちながら、同時にチームのマネジメントも行う管理職のことです。大企業では、管理職はマネジメント専任であることが多いですが、人員に余裕のない中小企業では、管理職が「プレーヤー兼マネージャー」であることがほぼ標準です。

北関東の中小企業の管理職の多くは、「名プレーヤー」だったから管理職に昇格した人たちです。営業で圧倒的な成績を出していた人、技術力が抜群だった人、顧客からの信頼が厚かった人。しかし、プレーヤーとして優秀であることと、マネージャーとして優秀であることは、全く異なるスキルです。そして、プレーヤーの仕事に追われている限り、マネジメントに割く時間も精神的な余裕もありません。

この状態が続くと、部下は放置され、育成が滞り、チームの生産性が上がらず、管理職本人は疲弊する——という悪循環に陥ります。今回は、この「プレイングマネージャー問題」をどう解消するかを考えます。


プレイングマネージャー問題の「構造」

この問題が根深い理由は、構造的な要因が複数絡み合っているからです。

構造1:人員不足。

管理職がプレーヤーの仕事を手放せないのは、それを代わりにやる人がいないからです。北関東の中小企業では、慢性的な人手不足が続いており、「管理職の分の仕事を引き受けてくれる人材」を確保できない企業が多い。

構造2:評価制度のズレ。

管理職の評価が「プレーヤーとしての個人成果」に偏っていることが多い。「自分の売上目標を達成したか」「自分が手がけた案件の利益はいくらか」——こうした評価基準では、管理職はマネジメントよりもプレーヤーとしての仕事を優先します。

構造3:管理職自身の「プレーヤーへの未練」。

自分が得意な仕事を手放すのは、心理的に難しいものです。「部下に任せるより自分でやったほうが早い」「自分のほうが品質が高い」——こうした思いが、仕事を手放すことへの抵抗を生みます。

構造4:マネジメントスキルの不足。

プレーヤーとして優秀だった人が、マネジメントのやり方を学ぶ機会がないまま管理職になる。「部下に何をどう指示すればいいかわからない」「フィードバックの仕方がわからない」——マネジメントに自信がないから、つい得意なプレーヤーの仕事に逃げてしまう。


解消のためのアプローチ

プレイングマネージャー問題を解消するための、具体的なアプローチを提案します。

アプローチ1:「マネジメント時間」の強制確保。

まず、管理職の週のスケジュールに「マネジメント専任時間」を物理的に確保します。「毎週金曜の午後は、マネジメント業務に充てる」「毎朝30分は部下との対話の時間にする」——こうした時間を、プレーヤーの仕事が入らない「聖域」として保護します。

宇都宮市のある製造業では、管理職の週間スケジュールに「マネジメントデー」を設定しました。毎週水曜日を「プレーヤー業務禁止日」とし、1on1、チームミーティング、部下の育成計画の見直し、採用活動などに充てることを義務化しています。「強制的にでも時間を確保しないと、プレーヤーの仕事に流されてしまう。水曜日があるから、マネジメントができている」と管理職から評価されています。

アプローチ2:プレーヤー業務の「手放し」計画。

管理職が抱えているプレーヤー業務を棚卸しし、「部下に委譲できるもの」「仕組み化できるもの」「継続すべきもの」に分類します。

すべてのプレーヤー業務を一度に手放すのは現実的ではありません。半年から1年のスパンで、段階的に委譲していく計画を立てます。

「今月は、A案件の顧客対応を○○さんに引き継ぐ。来月は、B業務のルーティンをマニュアル化して○○さんに任せる。3ヶ月後には、自分のプレーヤー業務を現在の50%に減らす」——こうした具体的な計画があれば、管理職も「どうやって手放すか」の見通しが立ちます。

前橋市のある商社では、管理職全員に「手放しリスト」の作成を求めました。自分が担当しているプレーヤー業務を全て書き出し、各業務について「自分がやる理由」「部下に任せられない理由」「任せるために必要なこと」を整理します。これを上司(経営者)と共有し、「この業務は半年後に部下に移管する」という合意を取り付けます。

アプローチ3:評価制度の見直し。

管理職の評価基準を、「個人のプレーヤー成果」から「チームの成果」と「部下の育成」にシフトします。

評価項目の例:

  • チーム全体の目標達成率
  • 部下のスキルアップ(スキル評価の向上度)
  • 部下のエンゲージメント(サーベイスコア)
  • チームの離職率
  • 1on1の実施率

高崎市のあるIT企業では、管理職の評価ウェイトを「個人成果30%:チーム成果40%:部下育成30%」に設定しています。以前は「個人成果70%:チーム成果30%」だったため、管理職はプレーヤーの仕事を優先していました。評価ウェイトの変更後、管理職のマネジメントへの時間配分が明らかに増え、部下の成長スピードが向上しました。

アプローチ4:「No.2」の育成。

管理職のプレーヤー業務を引き受ける「No.2」を意図的に育成します。管理職の右腕として、管理職の業務の一部を代行できる人材を計画的に育てることで、管理職がマネジメントに集中できる環境を作ります。

栃木のある食品メーカーでは、各部門の管理職に「サブリーダー」を任命しています。サブリーダーは、管理職のプレーヤー業務の一部を段階的に引き受けると同時に、将来の管理職候補としてマネジメントスキルも学んでいきます。「サブリーダーが育ったおかげで、自分は本来のマネジメントに集中できるようになった」と、ある部門長は語ります。

アプローチ5:マネジメントスキルの教育。

プレーヤーの仕事に逃げる原因のひとつは、マネジメントへの自信の欠如です。管理職に必要なスキル(目標設定、フィードバック、コーチング、チームビルディング、タイムマネジメント)を体系的に教育することで、「マネジメントもできる」という自信を育てます。


「完全にプレーヤーを辞める」必要はない

ここで重要な点を付け加えます。プレイングマネージャー問題の「解消」は、「管理職がプレーヤー業務をゼロにする」ことを意味するわけではありません。北関東の中小企業の現実として、管理職が全くプレーヤー業務をしないというのは難しいケースも多い。

目指すべきは、「プレーヤー業務とマネジメント業務のバランスを適正化する」ことです。現状が「プレーヤー80%:マネジメント20%」であるならば、「プレーヤー50%:マネジメント50%」を目指す。あるいは、「プレーヤー40%:マネジメント60%」を理想として段階的に移行する。

このバランスの「最適解」は、企業の規模、業種、管理職の配下人数によって異なります。部下が3人の管理職と、10人の管理職では、必要なマネジメント時間が異なるのは当然です。


プレイングマネージャー問題の解消を経営数字で測る

施策の効果を、数字で検証します。

測定指標1:管理職のマネジメント時間の割合。

管理職に「先週、マネジメント業務にどのくらいの時間を使ったか」を自己申告してもらいます。この割合の推移を追跡します。

測定指標2:チームの生産性。

管理職がマネジメントに時間を使うようになった結果、チーム全体の生産性がどう変化したかを確認します。

測定指標3:部下の育成状況。

部下のスキル評価の変化、1on1の実施率、部下の満足度スコアなどを追跡します。

測定指標4:管理職自身のストレス。

管理職のワークライフバランスやストレスの状態を、サーベイで確認します。プレーヤー業務の負荷が軽減されれば、管理職のストレスも改善するはずです。

茨城のある物流企業では、プレイングマネージャー問題への取り組みを始めて1年後、管理職のマネジメント時間の割合が平均20%から45%に向上しました。それに伴い、チーム全体の生産性は8%向上し、管理職配下の離職率は12%から6%に半減しました。管理職自身も「部下の成長を実感できるようになった。これがマネジメントのやりがいだとわかった」と語っています。


経営者に求められる「覚悟」

プレイングマネージャー問題の解消には、経営者の覚悟が不可欠です。

短期的な生産性低下を受け入れる。

管理職がプレーヤー業務を手放し、マネジメントに集中する過程で、一時的に業務の処理速度が落ちることがあります。部下はまだ管理職のレベルに達していないため、品質や速度が低下する場面が出ます。この「成長の痛み」を経営者が受け入れ、「今は投資の時期」と理解することが大切です。

管理職を「守る」。

プレーヤー業務を手放そうとする管理職に対して、「もっと売上を作れ」「自分もプレーヤーとして動け」と圧力をかけてしまっては、問題は永遠に解消しません。経営者が「マネジメントに集中してほしい」と明確にメッセージを出し、管理職を守ることが重要です。

群馬のある製造業では、経営者が管理職全員に対して「来期から、あなたたちの評価は『チームの成果』で行います。個人の数字を追う必要はありません」と宣言しました。この一言が、管理職の「プレーヤーの仕事を手放してもいいんだ」という安心感を生み、マネジメントへの転換を大きく後押ししました。


プレーヤーから「マネージャー」への意識転換

プレイングマネージャー問題の根底には、管理職自身の「自分は何者か」というアイデンティティの問題があります。「自分は優秀なプレーヤーだ」から「自分はチームの力を最大化するマネージャーだ」への意識転換が、最も本質的な解決策です。

「自分がやれば1の成果が出る。でも、部下10人がそれぞれ0.8の成果を出せるように育てれば、チームとして8の成果が出る」——この算数を理解し、実感することが、プレーヤーからマネージャーへの転換点です。

北関東の中小企業の管理職が、この転換を実現すること。それは、管理職個人の成長であると同時に、チームの成長であり、組織全体の競争力強化です。一朝一夕にはいきませんが、仕組みと支援と時間をかけて、確実に変化は生まれます。その変化を信じて、一歩ずつ進んでいくことが大切だと、私は考えています。

0

人事の知見が集まるコミュニティで、実践知を学びませんか?

人事図書館は、人事のプロフェッショナルが集まる学びのコミュニティです。

関連記事

北関東の企業が「管理職研修」を実務につなげるための設計
育成・研修

北関東の企業が「管理職研修」を実務につなげるための設計

管理職研修をやったけど、現場は何も変わらなかった——北関東の中小企業で、このような声を聞くことは珍しくありません。外部の講師を招いて研修を実施し、参加者はその場では勉強になったと感想を述べるものの、翌日からの仕事が変わるわけではない。研修で学んだ内容は、日常業務の忙しさの中で薄れていく。これが、多くの中小企業に

#1on1#エンゲージメント#採用
北関東の企業が「暗黙知」を形式知に変える方法
育成・研修

北関東の企業が「暗黙知」を形式知に変える方法

あの人が辞めたら、仕事が回らなくなる——北関東の中小企業で、こうした不安を感じている経営者や管理職は多いのではないでしょうか。特定の社員だけが持っている技術やノウハウ、長年の経験に基づく判断力。これらが文書化されていない暗黙知として個人の中に留まっている限り、その社員の退職や異動がそのまま組織の機能不全につなが

#評価#研修#組織開発
北関東の製造業が「安全文化」と人材育成を結びつける方法
育成・研修

北関東の製造業が「安全文化」と人材育成を結びつける方法

製造業にとって、安全は最優先事項です。どれだけ生産性が高くても、品質が良くても、労働災害が発生すれば、すべてが台無しになります。人命に関わる問題であることはもちろん、労災による生産停止、行政処分、企業イメージの毀損——その影響は甚大です。

#評価#研修#組織開発
栃木の製造業が品質管理人材を育てる研修設計
育成・研修

栃木の製造業が品質管理人材を育てる研修設計

品質管理の担当者が定年で辞めるんだけど、後任が育っていない。外から採ろうにも、品質管理の経験者なんて見つからない——栃木県内のある自動車部品メーカーの工場長が、深刻な表情でそう語ったことがあります。品質管理は、製造業の生命線です。品質が守れなければ、顧客の信頼は一瞬で失われます。

#評価#研修#組織開発