北関東のIT企業がリモートワークで首都圏人材を採用する方法
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北関東のIT企業がリモートワークで首都圏人材を採用する方法

#1on1#採用#評価#組織開発#制度設計

北関東のIT企業がリモートワークで首都圏人材を採用する方法

「地方のIT企業」という言葉に、どんなイメージを持つでしょうか。東京の一等地にオフィスを構える華やかなスタートアップとは対照的に、北関東のIT企業は地味な存在に見えるかもしれません。しかし、リモートワークの普及は、この「地理的ハンディキャップ」をひっくり返す可能性を秘めています。

北関東には、実は多くのIT企業が存在します。宇都宮や前橋の受託開発会社、つくばの技術系ベンチャー、太田や高崎のSIer、各地の自治体システムを手がける地場のIT企業——規模は大きくないものの、地域経済のデジタル化を支える重要な存在です。

しかし、これらの企業が共通して抱えているのが、「エンジニアが採れない」という課題です。北関東のIT人材市場は、東京に比べて圧倒的に薄い。地元にエンジニアを志す若者が少なく、経験者の中途採用も困難。ならば、東京にいるエンジニアをリモートワークで採用できないか——この発想は自然なものですし、実際に成功している企業もあります。

ただし、「リモートワークを導入すれば勝手にエンジニアが集まる」わけではありません。リモートワークでの採用には、独自の設計と工夫が必要です。


なぜ首都圏エンジニアが地方企業に興味を持つのか

まず、「なぜ東京で働けるエンジニアが、わざわざ北関東のIT企業で働きたいと思うのか」を理解する必要があります。リモートワークで場所の制約がなくなったとしても、選択肢は東京の企業も含めて無数にあります。その中で北関東の企業を選ぶ理由は何か。

理由1:「生活拠点を東京から移したい」人がいる。

コロナ禍以降、東京の高い家賃や満員電車に疑問を持ち、地方に移住する——あるいは移住を検討する——エンジニアが増えています。北関東は東京まで新幹線で1時間弱。完全リモートでなくても、月に数回の出社なら十分に通える距離です。

つくばエクスプレスの沿線に移住し、つくば市のIT企業にリモートワークで勤務しているエンジニアは、「東京の家賃が月18万円だったのが、つくばでは月8万円。その差額で子どもの教育費が楽になった」と話していました。

理由2:「規模の小さい会社のほうが面白い」と感じる人がいる。

東京の大手SIerやメガベンチャーで働いてきたエンジニアの中には、「歯車のひとつ」であることに疲れた人がいます。小さな会社で、技術選定からアーキテクチャ設計、実装、運用まで一貫して関わりたい。あるいは、BtoBの地道なシステム開発よりも、地域の課題をテクノロジーで解決する仕事に興味がある。

北関東のIT企業が提供できるのは、まさにこうした「全体が見える開発環境」です。従業員20人のIT企業であれば、エンジニアは技術の全工程に関わることができる。この「全体感」は、大きな組織では得られない価値です。

理由3:「リモートワークが標準」の環境を求める人がいる。

東京の大手企業では、コロナ禍後にオフィス回帰の動きが進んでいます。「リモートワーク可能」を謳いながら、実態は週3〜4日出社を求める企業も少なくない。一方で、地方のIT企業はリモートワークが「ないと人が採れない」ため、本気でリモートワーク体制を整えている。この「建前ではなく本気のリモートワーク環境」に魅力を感じるエンジニアがいます。


リモートワーク採用で「選ばれる企業」になるために

首都圏エンジニアにリモートワークで働いてもらうためには、「リモートワークができます」だけでは不十分です。リモートワークの「質」で差別化する必要があります。

「開発環境」を具体的にアピールする。

エンジニアが転職先を選ぶとき、最も重視するのは技術スタックと開発環境です。「どんな言語を使っているか」「どんなフレームワークを採用しているか」「CI/CDは整備されているか」「コードレビューの文化はあるか」——こうした技術的な詳細を、採用ページで具体的に公開することが重要です。

前橋市のある受託開発会社では、採用ページにGitHubのコントリビューショングラフ(個人情報を除いたもの)や、使用しているOSSのリストを掲載しています。「うちの技術レベルをオープンにすることで、応募前のミスマッチを減らせている」と人事担当者は言います。

「リモートワークの制度」を詳細に示す。

「フルリモート可能」とだけ書くのではなく、リモートワークに関する制度を詳細に示すことが信頼につながります。

  • リモートワーク手当(光熱費・通信費の補助):月額いくら
  • 在宅勤務に必要な機材の支給(外部ディスプレイ、椅子、デスク等)
  • 出社頻度の目安(月に○回のオフィスデー、四半期に○回の合宿)
  • コミュニケーションツール(Slack、Zoom等の使用状況)
  • 勤怠管理の方法(成果管理型か、時間管理型か)

宇都宮市のあるIT企業では、リモートワーク手当として月額15,000円を支給し、入社時に最大10万円のリモートワーク環境構築費を補助しています。これらの制度を採用ページに明記したところ、「ここまで具体的に制度が整っている地方企業は珍しい」と候補者からの評価が高まりました。

「給与水準」を首都圏基準に近づける。

リモートワークで首都圏のエンジニアを採用する場合、給与水準は最大の検討事項になります。「地方だから安い」では、首都圏の優秀なエンジニアは採れません。

完全に東京水準の給与を出す必要はありませんが、「東京の8〜9割」程度の水準は最低限必要です。北関東の生活コストの低さを勘案すれば、額面では低くても実質的な生活水準は同等以上であることを、具体的な数字で示すことが効果的です。


リモートワーク組織の「マネジメント」を設計する

リモートワークで人を採用することと、リモートワーク組織を運営することは別の課題です。採用はできたが、うまく組織が回らない——こうなると、せっかく採用した人材も離れていきます。

「非同期コミュニケーション」を基本にする。

リモートワーク組織では、全員が同じ時間にオンラインでいるとは限りません。「非同期コミュニケーション」——つまり、相手がすぐに応答しなくても仕事が進む仕組み——を基本にする必要があります。

具体的には、テキストベースのコミュニケーションを充実させること。Slackやチャットツールでの議論を「ストック型」(後から検索・参照できる形)で運用する。会議の議事録を共有する。ドキュメントを充実させる。「聞けばわかる」ではなく「読めばわかる」状態を作ることが、リモートワーク組織の生産性の基盤です。

つくば市のあるAIスタートアップでは、「ドキュメントファースト」の文化を徹底しています。新しい仕様、設計上の意思決定、トラブルの原因と対処——すべてをNotion上にドキュメント化する。「口頭で決めたことは、ドキュメントに書くまで正式な決定ではない」というルールを設けることで、情報の非対称性を防いでいます。

「1on1ミーティング」の頻度を上げる。

リモートワーク環境では、オフィスで自然に生まれる「雑談」や「ちょっとした相談」がなくなります。これを補うために、上司と部下の1on1ミーティングを最低でも週1回、30分実施することを推奨します。

1on1の内容は、業務の進捗確認だけでなく、「困っていること」「やりたいこと」「組織へのフィードバック」など、幅広いテーマを含めます。リモートワークでは、メンバーの「小さな変化」に気づきにくいため、定期的な対話の場を意図的に作ることが重要です。

「対面の場」を戦略的に設計する。

完全リモートワークであっても、対面の場は必要です。しかし、「毎日出社」ではなく、「対面だからこそ価値がある場面」に集中させることがポイントです。

  • 四半期に一度の「全社合宿」(2泊3日程度、チームビルディングと戦略討議)
  • 月に一度の「オフィスデー」(任意参加、雑談と軽い打ち合わせ)
  • プロジェクトのキックオフと振り返り(対面で集中的に議論)

高崎市のあるIT企業では、四半期ごとに草津温泉で2泊3日の合宿を実施しています。温泉旅館を貸し切り、日中はワークショップや技術勉強会、夜は懇親会。「この合宿があるから、普段のリモートワークでもチームの一体感が保てている」とCTOは語ります。合宿の費用は四半期で約100万円ですが、チームの結束力維持と離職防止の効果を考えれば、十分にペイしている投資です。


リモートワーク採用の「落とし穴」

リモートワークでの採用には、注意すべき落とし穴もあります。

「採用のハードルを下げすぎない」こと。

リモートワーク可能にすれば応募は増えます。しかし、量を追うあまり選考基準を下げてしまうと、ミスマッチが増えます。リモートワーク環境では、自律的に仕事を進められる能力が特に重要です。技術力に加えて、「自分でタスクを管理できるか」「テキストで的確にコミュニケーションできるか」「孤立せずに助けを求められるか」——こうしたソフトスキルも選考の評価軸に含めることが大切です。

「文化の希薄化」に対処すること。

リモートワーク組織では、企業文化が薄まりやすいという課題があります。オフィスで日常的に交わされる雑談、先輩の仕事ぶりを見て学ぶ機会、ランチタイムの何気ない会話——こうした「文化の伝搬チャネル」がリモートワークでは失われます。

対策として、「バーチャルコーヒータイム」(週に一度、ランダムにペアを組んで15分間の雑談をする仕組み)や、「ウィークリーの全社朝会」(5分間の近況報告)、「テキストベースの日報」(その日の仕事と発見を共有する)など、意図的にカルチャーを作る仕組みが必要です。

「評価の公平性」を担保すること。

リモートワーク環境では、「見えている人」と「見えない人」の差が生まれやすい。オフィスに来る人のほうが存在感があり、評価されやすいという「近接バイアス」は、リモートワーク組織で最も注意すべき問題のひとつです。

評価基準を「プロセス(頑張っている姿が見える)」ではなく「成果(何を達成したか)」に重きを置くこと。そして、リモートワークの社員もオフィス勤務の社員も、同じ基準で評価されていることを明示することが重要です。


北関東のIT企業が持つ「隠れた強み」

リモートワーク時代における北関東のIT企業には、実は独自の強みがあります。

地域密着の案件がある。

北関東のIT企業は、地元の製造業、農業、自治体、医療機関などのシステム開発を手がけていることが多い。これらの案件は、地域に根ざした深い業務理解が必要であり、東京のIT企業が簡単に参入できない領域です。「地域の課題をテクノロジーで解決する」という仕事に魅力を感じるエンジニアにとって、これは大きな価値です。

意思決定が速い。

小さな組織ゆえに、意思決定のスピードが速い。新しい技術の導入、開発プロセスの改善、顧客への提案——「やろう」と決めたら、翌日から動ける。この機動力は、大企業にはない魅力です。

リモートワークは手段であって目的ではありません。北関東のIT企業が首都圏人材を採用するためには、リモートワークという「働き方」の魅力に加えて、「何を作っているか」「どう成長できるか」「組織としてどこを目指しているか」——事業そのものの魅力を伝えることが不可欠です。

リモートワークの仕組みを整え、首都圏エンジニアに「北関東の企業で働く」という選択肢を提示すること。それは、北関東のIT産業の可能性を広げる大きな一歩です。

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