
北関東の企業が「採用広報」をゼロから始める方法
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北関東の企業が「採用広報」をゼロから始める方法
「求人票を出しているのに、応募が来ない。何が足りないんだろう」——北関東の中小企業の経営者から、この相談を受けるたびに、私はまず「御社のことを知っている求職者は、どのくらいいますか?」と問い返します。多くの場合、答えは沈黙です。
北関東の中小企業が採用に苦戦する最大の理由のひとつは、「そもそも知られていない」ことです。群馬、栃木、茨城の中小企業には、素晴らしい技術や職場環境を持つ会社がたくさんあります。しかし、その魅力が社外に伝わっていない。求人票に「アットホームな職場です」「福利厚生充実」と書いても、それだけでは求職者の心は動きません。
採用広報とは、自社の魅力を戦略的に発信し、「この会社で働きたい」と思ってもらうための活動です。大企業のように潤沢な広告予算がなくても、工夫と継続によって採用広報は十分に成果を出せます。今回は、北関東の中小企業が採用広報をゼロから立ち上げるための具体的な方法を考えます。
なぜ「採用広報」が必要なのか
求人媒体にお金を払って求人を掲載する——これが従来の採用活動の中心でした。しかし、この「待ちの採用」だけでは、人材獲得が年々難しくなっています。
理由1:求人媒体の効果低下。
北関東の中小企業が大手求人媒体に掲載しても、東京の大企業の求人に埋もれてしまいます。掲載費だけかかって応募ゼロ——こうした経験をしている企業は少なくないのではないでしょうか。求人媒体に依存するだけでなく、自社の情報を自ら発信する力が必要です。
理由2:求職者の情報収集行動の変化。
今の求職者、特に20代から30代は、求人票だけでは応募を決めません。応募前に企業のウェブサイト、SNS、口コミサイトなどを徹底的に調べます。「この会社はどんな雰囲気か」「どんな人が働いているか」「社長はどんな考えの人か」——こうした情報がないと、応募のボタンを押してもらえません。
理由3:採用ブランドの蓄積効果。
採用広報は、一度やれば終わりではなく、継続することで効果が蓄積されていきます。SNSのフォロワーが増え、ブログ記事が検索に引っかかり、「あの会社、なんか良さそう」という認知が地域に広がっていく。この蓄積効果は、求人媒体の単発掲載では得られないものです。
採用広報を始める前に「自社の魅力」を言語化する
採用広報で最初にやるべきことは、「うちの会社の何が魅力なのか」を言語化することです。これが曖昧なまま発信を始めると、当たり障りのない内容しか出てきません。
魅力の棚卸しワークショップ。
経営者と社員数名で、「うちの会社の良いところ」を付箋に書き出すワークショップを開催します。「仕事のやりがい」「人間関係」「成長機会」「待遇」「立地」「業界の将来性」——多角的な視点から魅力を洗い出します。
重要なのは、経営者だけの視点ではなく、現場の社員の声を拾うことです。経営者が「うちの魅力は技術力だ」と思っていても、社員は「チームの雰囲気が良いのが一番の魅力」と感じているかもしれません。求職者が知りたいのは、実際に働いている人の実感です。
前橋市のある製造業では、全社員20名に「この会社で一番良いと思うところ」を匿名アンケートで聞きました。最も多かった回答は「困った時にみんなが助けてくれること」。これを採用広報のメインメッセージに据え、「助け合いが当たり前の職場」として発信を始めたところ、応募者から「あの雰囲気に惹かれました」という声が増えました。
ターゲットの明確化。
誰に向けて発信するのかを明確にします。「20代の未経験者」と「30代の経験者」では、響くメッセージが異なります。「地元で働きたいUターン希望者」と「都市部からの移住者」でも、必要な情報が異なります。
ターゲットを絞ることは、「他の層を切り捨てる」ことではありません。「最も届けたい相手」を明確にすることで、メッセージの切れ味が上がり、結果的に幅広い層にも響くようになります。
採用広報の「5つのツール」
北関東の中小企業が使える採用広報のツールを、コストと効果の観点から整理します。
ツール1:自社採用ページ。
自社のウェブサイトに「採用情報」ページを設けることは、採用広報の基盤です。求人票の情報だけでなく、会社の紹介、社員インタビュー、職場の写真、1日の仕事の流れ、福利厚生の詳細——求職者が知りたい情報を網羅的に掲載します。
ポイントは「写真」です。職場の写真、社員の笑顔、実際の仕事風景——テキストだけでは伝わらない「雰囲気」は、写真が最も効果的に伝えます。プロのカメラマンに依頼するのが理想ですが、スマートフォンでも十分に良い写真が撮れます。
高崎市のあるIT企業では、採用ページに「社員の1日」を写真付きで掲載しています。朝のコーヒータイム、チームでの打ち合わせ、昼食の風景、集中して作業する姿——日常の風景が並ぶだけで、「この職場で働く自分」をイメージしやすくなります。
ツール2:SNS(Instagram・X)。
SNSは、コストゼロで始められる採用広報の強力なツールです。毎日の投稿は大変ですが、週に2回から3回のペースでも十分に効果があります。
投稿のネタ例:
- 職場の日常風景
- 社員の紹介(趣味や仕事への思いなど)
- 新しいプロジェクトの紹介
- 社内イベントの様子
- ランチの風景
- 季節の挨拶と絡めた会社紹介
宇都宮市のある建設会社では、若手社員がInstagramの運用を担当しています。現場の写真、完成した建物の写真、社員の笑顔——飾らない投稿が共感を呼び、フォロワーが500人を超えました。「Instagramを見て応募しました」という求職者が、導入後1年で4名。採用コストとしては破格の効率です。
ツール3:ブログ・note。
社長や社員がブログを書くことで、会社の考え方や雰囲気を深く伝えることができます。SNSよりも長文で、より深い内容を発信できるのが特徴です。
テーマ例:
- 「当社が大切にしている3つの価値観」
- 「入社5年目の○○さんに聞いた、この会社を選んだ理由」
- 「社長が語る、創業の原点と今後のビジョン」
- 「北関東で働く魅力——私たちが群馬を選んだ理由」
太田市のある部品メーカーでは、月に2本のペースでnoteに記事を投稿しています。社長自らが「なぜこの事業をやっているのか」「北関東のものづくりの未来」といったテーマで書いており、記事を読んだ求職者から「社長の考えに共感して応募しました」という声が届いています。
ツール4:動画(YouTube・TikTok)。
動画は、テキストや写真以上に「雰囲気」を伝える力があります。スマートフォンで撮影・編集し、YouTubeやTikTokに投稿するだけで、採用広報のコンテンツになります。
1分程度のショート動画で十分です。「社員に聞いた、この会社の好きなところ」「1日の仕事をダイジェストで紹介」「社長メッセージ」——短くても、動画には「空気感」が映ります。
ツール5:イベント・見学会。
オンラインだけでなく、リアルな接点も重要です。「工場見学会」「職場体験」「カジュアル面談会」——こうしたイベントを定期的に開催し、求職者が実際に職場を訪れる機会を作ります。
茨城のある食品メーカーでは、月に1回の「オープンファクトリー」を開催しています。求職者だけでなく、地域の人にも工場を公開し、製造工程の見学と社員との対話の場を設けています。「実際に見ると、思っていた以上にきれいな工場で驚いた」「社員の方が楽しそうに働いていた」——こうした体験が、応募の後押しになっています。
採用広報の「コンテンツ設計」
発信するコンテンツの「設計」が、採用広報の成否を分けます。
コンテンツの3つの軸。
採用広報のコンテンツは、以下の3つの軸で設計します。
軸1:会社の魅力(何をしている会社か、どんな価値を提供しているか) 軸2:人の魅力(どんな人が働いているか、どんな雰囲気か) 軸3:仕事の魅力(どんな仕事か、成長できるか、やりがいはあるか)
この3つをバランスよく発信することで、求職者は「この会社で働くイメージ」を具体的に描けるようになります。
「社員インタビュー」は最強のコンテンツ。
採用広報で最も効果が高いコンテンツは、「実際に働いている社員の声」です。入社の動機、仕事の内容、やりがい、職場の雰囲気、将来の目標——社員の言葉で語られるリアルな情報は、会社が発信する公式メッセージよりも説得力があります。
栃木のある物流企業では、社員インタビューを四半期に1本のペースで作成しています。新人、中堅、ベテラン、管理職——さまざまな立場の社員が、自分の言葉でこの会社のことを語ります。「入社前は不安だったけど、先輩が丁寧に教えてくれた」「自分の提案が通って、新しい配送ルートを作れた時は嬉しかった」——こうした生の声が、求職者の不安を解消し、応募を促しています。
「日常」を見せることの力。
採用広報は、「特別なこと」だけを発信する必要はありません。むしろ、「普通の日常」を見せることのほうが効果的です。朝のミーティング、昼食の風景、仕事に集中する姿、帰り際の挨拶——こうした日常の切り取りが、「この職場で自分が働いている姿」を想像させます。
採用広報の運用体制
採用広報を継続するための、社内の運用体制を整えます。
担当者の任命。
採用広報の担当者を明確にします。人事担当者が兼務することが多いですが、SNSやブログの運用は若手社員に任せるのも効果的です。若手ならではの感覚で、求職者に近い目線のコンテンツが作れます。
無理のないペースで始める。
最初から毎日投稿しようとすると、すぐに息切れします。「週に2回のSNS投稿」「月に1本のブログ記事」——このくらいのペースで始めて、余裕が出てきたら頻度を上げていくのが現実的です。
「ネタ帳」を作る。
「何を投稿しよう」と毎回悩むのは非効率です。日頃から「これは投稿のネタになりそうだ」と思ったことをメモしておく「ネタ帳」を用意します。社員の何気ない発言、社内イベントの予定、季節の行事——ネタは日常の中にいくらでもあります。
水戸市のある製造業では、総務部の若手2名が「採用広報チーム」として活動しています。月に1回の「コンテンツ会議」で翌月の投稿計画を立て、撮影や記事作成を分担します。「二人でやっているから、アイデアが出しやすいし、続けやすい」と担当者は語ります。
北関東ならではの採用広報のネタ
北関東の企業が発信できる、地域ならではの魅力があります。
「車通勤OK」「駐車場完備」の安心感。
東京からのUターン・Iターンを検討している人にとって、「車通勤ができる」「無料駐車場がある」という情報は、思いのほか大きな魅力です。通勤ストレスのなさを具体的に伝えましょう。
自然環境と生活コストの優位性。
群馬の山々、栃木の田園風景、茨城の海——北関東の自然環境は、都市部では得られない生活の質を提供します。住居費が東京の半分以下であること、子育て環境の良さ、週末のレジャーの充実——「仕事だけでなく、生活全体が豊かになる」というメッセージは、都市部の求職者に強く響きます。
「地域の有名企業」としてのポジション。
北関東の中小企業は、東京のスタートアップと比べれば知名度は低いかもしれません。しかし、地元では「あの会社は良い会社だ」と知られている企業は多い。この「地元での信頼」を採用広報で可視化することが重要です。
伊勢崎市のある機械メーカーでは、採用広報で「地元密着50年」をキーワードにしています。地域のお祭りへの協賛、地元の学校への出前授業、消防団への参加——こうした地域活動を通じて築いた信頼を、SNSやブログで発信しています。「地元に根ざした会社で働きたい」という価値観を持つ求職者にとって、この情報は大きな判断材料になっています。
採用広報の効果を測定する
採用広報への投資効果を、数字で把握します。
測定指標1:認知度の変化。
面接時に「当社をどこで知りましたか?」と聞き、採用広報経由の認知がどのくらいあるかを把握します。SNS、ブログ、採用ページ——チャネル別の認知経路を追跡します。
測定指標2:自社サイト経由の応募数。
求人媒体ではなく、自社の採用ページから直接応募した人数を追跡します。この数字が増えていれば、採用広報の効果が出ている証拠です。
測定指標3:SNSのフォロワー数とエンゲージメント。
フォロワー数、いいね数、コメント数、シェア数——これらの指標は、採用広報のコンテンツがどの程度届いているかを示します。
測定指標4:応募者の質の変化。
採用広報を通じて自社の情報を十分に得た上で応募している人は、「ミスマッチ」が少ない傾向があります。入社後の定着率や満足度を、採用広報開始前後で比較します。
高崎市のあるサービス業の企業では、採用広報を始めて1年後の効果測定を行いました。自社サイト経由の応募が前年比で3倍に増加し、応募者の面接通過率も向上しました。特に顕著だったのは、「御社のSNSを見て、雰囲気が良いと思いました」という応募理由の増加です。採用単価は、媒体中心だった前年と比較して40%削減されました。
継続こそが最大の武器
採用広報は、短期的に劇的な効果が出るものではありません。しかし、継続することで確実に効果が蓄積されていきます。1年目は「種まき」、2年目は「芽が出る」、3年目は「実がなる」——このくらいのスパンで考えることが大切です。
北関東の中小企業が、自社の魅力を自分の言葉で語り、継続的に発信し続けること。それは、「求人票を出して応募を待つ」受け身の採用から、「自社のファンを作り、自然と人が集まる」能動的な採用への転換です。お金はかけなくても、手間と工夫と継続で、採用広報は確実に成果を生みます。北関東の企業の魅力を、もっと多くの人に届けること。その第一歩を、今日から踏み出してほしいと私は思っています。
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