群馬のIT企業がアジャイル組織で人事をどう設計するか
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群馬のIT企業がアジャイル組織で人事をどう設計するか

#エンゲージメント#採用#評価#組織開発#キャリア

群馬のIT企業がアジャイル組織で人事をどう設計するか

群馬県のIT産業は、近年着実に成長しています。高崎市、前橋市を中心に、受託開発、SaaS、組み込みソフトウェアなど、多様なIT企業が拠点を構えています。東京の大手SIerの下請けから脱却し、自社プロダクトの開発に舵を切る企業も出てきました。

こうしたIT企業の中で、「アジャイル開発」を取り入れる企業が増えています。アジャイル開発とは、短いサイクルで計画・開発・テスト・リリースを繰り返し、顧客のフィードバックを素早く反映しながらプロダクトを改善していく開発手法です。従来のウォーターフォール型(計画を全部立ててから一気に開発する手法)と比べて、変化への対応力が高い。

しかし、開発手法をアジャイルにしても、組織の仕組みが旧来のままでは、アジャイルの効果は限定的です。評価制度、報酬体系、キャリアパス、チーム編成——これらの人事の仕組みが、アジャイルの考え方と整合していなければ、現場と制度の間に摩擦が生じます。

今回は、群馬のIT企業がアジャイル組織で人事をどう設計するかを考えます。


アジャイル組織と従来型組織の違い

まず、アジャイル組織が従来型の組織とどう異なるかを整理します。

違い1:チームの自律性。

従来型の組織では、マネージャーが仕事を分配し、進捗を管理し、品質をチェックします。アジャイル組織では、チームが自律的に計画を立て、タスクを分担し、品質を担保します。チームに権限が委譲されている。

違い2:役割の流動性。

従来型では「プロジェクトマネージャー」「プログラマー」「テスター」と役割が固定されがちです。アジャイルでは、チームメンバーがスプリント(短い開発サイクル)ごとに異なる役割を担うことがあります。設計もコーディングもテストも、チーム全体でカバーする。

違い3:短いフィードバックサイクル。

従来型では、半年から1年の長いプロジェクトの最後に成果物を評価します。アジャイルでは、2週間から1ヶ月のスプリントごとに成果を振り返り、改善を続けます。

違い4:階層の少なさ。

アジャイル組織では、管理職の階層が少なく、フラットな構造です。情報の伝達が速く、意思決定が迅速。

高崎市のあるSaaS企業が、ウォーターフォール型からアジャイル開発に移行した際、最初にぶつかった壁が人事制度でした。「開発チームはスプリントで回しているのに、評価は半期に1回。チームで成果を出しているのに、評価は個人単位。現場のやり方と制度が合っていなかった」とCTOは振り返ります。


アジャイル組織の人事で見直すべき「5つの領域」

領域1:評価制度。

従来の半期ごとの目標管理(MBO)は、アジャイルの短いフィードバックサイクルとは相性が良くありません。半年前に立てた目標が、市場環境の変化やプロダクトの方向転換によって陳腐化していることがあるからです。

アジャイル組織に適した評価の方法としては、スプリントレトロスペクティブ(振り返り)の中で、個人の貢献を定期的にフィードバックする仕組みがあります。また、四半期ごとに短期目標を設定し、評価する「OKR(Objectives and Key Results)」の導入も選択肢の一つです。

さらに、チームの成果と個人の貢献の両方を評価する仕組みが重要です。アジャイルはチームワークが前提ですが、個人の評価が全くないと「頑張っても頑張らなくても同じ」というフリーライダー問題が発生します。チームの成果をベースにしつつ、個人の行動や貢献を360度フィードバックで補完するバランスが有効です。

前橋市のあるソフトウェア開発企業では、四半期OKRと、スプリントごとのピアフィードバック(チームメンバー間の相互フィードバック)を組み合わせた評価制度を運用しています。「半期に1回の評価では遅すぎる。四半期のOKRと、2週間ごとのフィードバックで、リアルタイムに近い評価ができるようになった」とエンジニアリングマネージャーは話します。

領域2:報酬体系。

アジャイル組織では、「マネージャーになる」以外のキャリアパスが重要です。優秀なエンジニアが管理職にならなくても、技術力に見合った報酬を得られる「技術職等級」の設計が必要です。

また、チームの成果に対するインセンティブの設計も検討します。プロダクトのリリース達成、顧客満足度の向上、技術的負債の解消——こうしたチーム目標の達成に対して、チーム全体にインセンティブを支給する仕組みです。

領域3:キャリアパス。

従来型の組織では、キャリアパスは「メンバー→リーダー→マネージャー→部長」という管理職ラダーが中心です。アジャイル組織では、これに加えて「テックリード→シニアエンジニア→アーキテクト→フェロー」といった技術専門職ラダーを整備します。

群馬のあるIT企業では、「マネジメントトラック」と「スペシャリストトラック」の2つのキャリアパスを設けています。どちらのトラックでも同等の報酬水準に到達できる設計です。「管理職にならないと給料が上がらない、という仕組みでは、マネジメントに向いていない優秀なエンジニアが辞めてしまう。2トラック制にしてから、シニアエンジニアの定着率が明らかに上がった」と人事担当者は語ります。

領域4:チーム編成と異動。

アジャイル組織では、プロジェクトやプロダクトの状況に応じて、チーム編成を柔軟に変更する必要があります。従来の「部門に所属する」という固定的な考え方から、「プロダクトチームに参加する」という流動的な考え方への転換が求められます。

ただし、チームの安定性も重要です。メンバーが頻繁に入れ替わるチームは、チームワークが成熟しません。「基本的なチームは固定しつつ、必要に応じて他チームからスキルを借りる」というバランスが現実的です。

領域5:採用。

アジャイル組織で活躍する人材には、技術力だけでなく、「自律性」「協働力」「学習意欲」「変化への適応力」が求められます。採用の選考プロセスに、これらの行動特性を評価する仕組みを組み込みます。

具体的には、ペアプログラミングやモブプログラミングの体験セッションを選考に取り入れる企業があります。候補者が実際にチームメンバーと一緒にコードを書く体験を通じて、協働のスタイルやコミュニケーションの質を確認します。

高崎市のあるSaaS企業では、最終面接の前に「お試しチーム参加」として、候補者に半日だけチームのスプリントに参加してもらう取り組みを行っています。「面接では見えない、チームとの相性がわかる。候補者にとっても、入社後の働き方をイメージできるメリットがある」とのことです。


アジャイル組織の人事における「スクラムマスター」と「人事」の関係

アジャイル開発のフレームワークの一つであるスクラムには、「スクラムマスター」という役割があります。スクラムマスターは、チームのプロセスを改善し、障害を取り除き、チームが最大のパフォーマンスを発揮できるよう支援する役割です。

スクラムマスターの仕事と人事の仕事には、重なる部分があります。チームの生産性向上、メンバーの成長支援、組織の障壁の除去——これらは人事の本質的な機能でもあります。

人事担当者がスクラムの基本を理解し、スクラムマスターと連携することで、より効果的な支援が可能になります。スクラムマスターからは「チームの状態」や「メンバーのモチベーション」に関する情報が得られ、人事は「全社的な制度」や「キャリア支援」の観点からチームを支援できます。


地方IT企業ならではの課題と対応

群馬のIT企業がアジャイル組織の人事を設計する際、地方ならではの課題があります。

課題1:エンジニア採用の難しさ。

東京と比べてエンジニアの母数が少なく、採用競争が厳しい。リモートワークの活用により東京在住のエンジニアを採用する選択肢もありますが、チームの一体感をどう維持するかという課題が生まれます。

課題2:学習機会の少なさ。

東京では毎週のように技術勉強会やカンファレンスが開催されますが、群馬ではそうした機会が限られます。社内での学習機会の提供、オンラインカンファレンスへの参加支援、技術書の購入補助——こうした施策で、学習機会の格差を補う必要があります。

前橋市のあるIT企業では、月1回の「テックデイ」を設けています。この日は通常業務を離れ、新しい技術の学習、社内勉強会、ハッカソンに充てます。「東京の会社に負けない学習環境を作ることが、エンジニアの定着につながる」とCTOは語ります。

課題3:アジャイルの理解度。

アジャイル開発に精通したエンジニアやスクラムマスターが地方では少ない。外部のアジャイルコーチを招聘したり、オンラインの認定資格の取得を支援したりすることで、組織全体のアジャイルリテラシーを高めます。


アジャイル組織のエンゲージメント管理

アジャイル組織では、エンゲージメントの管理方法も従来とは異なります。

従来型の組織では、年に1〜2回のエンゲージメントサーベイで社員の状態を把握します。しかし、アジャイル組織のスピード感では、半年前のサーベイ結果は古すぎます。

アジャイル組織に適しているのは、「パルスサーベイ」と呼ばれる、短い頻度で行う簡易調査です。週1回や隔週で、3〜5問の簡単な質問に答えてもらい、チームの健全性をリアルタイムに把握します。

高崎市のあるSaaS企業では、毎週金曜日に3問だけのパルスサーベイを実施しています。「今週の仕事の満足度は?」「チームワークは良好ですか?」「来週に向けて不安なことはありますか?」——この3問の回答を、スクラムマスターと人事がモニタリングし、問題の予兆があれば即座に対応します。「半年に1回のサーベイでは、問題が起きてから気づく。パルスサーベイなら、問題が大きくなる前に手を打てる」とのことです。


段階的な移行が鍵

群馬のIT企業がアジャイル組織に移行する際、人事制度も一気に変えるのではなく、段階的に移行することが現実的です。

まず1つのチームでアジャイル開発を始め、そのチームに合った人事の仕組みを試行する。うまくいった仕組みを他のチームに展開する。全社的な制度変更は、十分な検証を経てから行う。

この段階的なアプローチ自体が、アジャイルの考え方に則っています。小さく始め、検証し、改善し、拡大する。人事制度の設計そのものを、アジャイルに進めるのです。

群馬のIT企業が、アジャイルの考え方を開発だけでなく人事にも取り入れること。それは、変化の速いIT業界で持続的に成長するための組織基盤を構築することにつながります。完璧な制度を最初から作る必要はありません。試行錯誤を繰り返しながら、自社に合った仕組みを見つけていく。その姿勢こそが、アジャイルの本質だと、私は考えています。

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