北関東の中小企業が「組織図」を戦略的に設計する方法
組織開発

北関東の中小企業が「組織図」を戦略的に設計する方法

#採用#組織開発#経営参画#マネジメント#データ活用

北関東の中小企業が「組織図」を戦略的に設計する方法

「うちの組織図は、社員名簿みたいなものだ」——北関東の中小企業の経営者から、こんな言葉を聞いたことがあります。確かに、多くの中小企業の組織図は、単に「誰がどの部署にいるか」を示すだけの図になっています。部署名と社員名が並んでいるだけで、そこに戦略的な意図はない。

私は、組織図はもっと戦略的なツールになり得ると考えています。組織図は、企業が「どのような組織で事業を推進するか」という経営の意思を表現するものです。誰をどこに配置するかは、何に注力するかの表明であり、どのように事業を進めるかの設計図です。

しかし、北関東の中小企業では、組織図が戦略的に設計されているケースは多くありません。「昔からこの形だから」「社員が増えたから部署を増やした」「退職者が出たから兼務にした」——こうした場当たり的な対応の積み重ねで、組織図が出来上がっているケースが大半です。

今回は、北関東の中小企業が組織図を戦略的に設計するための考え方と方法について考えます。


組織図が「ただの図」になっている原因

多くの中小企業で組織図が形骸化している原因は、いくつかあります。

原因1:事業戦略と組織設計が連動していない。

「何をやるか」(事業戦略)と「どのような体制でやるか」(組織設計)が別々に考えられている。あるいは、事業戦略そのものが明文化されていないため、それに基づいた組織設計ができない。

原因2:人に組織を合わせている。

本来は「この役割が必要だから、この人を配置する」という順序で考えるべきですが、実際には「この人がいるから、この部署をつくる」「この人が退職したから、この部署をなくす」という、人起点の組織変更が行われている。

原因3:組織図を見直す機会がない。

一度つくった組織図を何年も見直さない。事業環境が変わり、社員構成が変わっても、組織の形はそのまま。定期的に組織図を見直すという習慣がない企業が多いです。

原因4:組織設計の知見が社内にない。

中小企業では、組織設計の専門知識を持った人材がいないことが多い。「組織をどう設計すればよいのか」という問いに対する方法論を持っていないため、結果として場当たり的な対応にならざるを得ない。

高崎市のある建設会社(従業員約90名)では、10年間同じ組織図を使い続けていました。「その間に社員数は1.5倍に増えたが、部署構成は変わっていなかった。一つの部署に30名以上が所属し、部長が全員を管理するのは不可能な状態だった」と社長は振り返ります。


組織図を設計するための5つの視点

組織図を戦略的に設計するためには、以下の5つの視点から検討します。

視点1:事業戦略から逆算する。

組織設計の出発点は、事業戦略です。「今後3年間で、どの事業を伸ばし、どの事業を維持し、どの事業を縮小するか」——この方針が、組織の形を規定します。

成長させたい事業領域には、それに見合った組織体制を整える。新規事業を始めるなら、そのための部署やチームを設ける。縮小する事業は、組織もコンパクトにする。事業戦略と組織設計が一体であることが、戦略的な組織図の基本です。

視点2:機能の重複と欠落を確認する。

現在の組織図を眺めて、「同じ機能を複数の部署が担っていないか」「誰も担っていない重要な機能はないか」を確認します。

北関東の中小企業でよく見られるのは、「品質管理」「人材育成」「情報システム」といった機能が、特定の部署に割り当てられず、曖昧な形で複数の部署にまたがっているケースです。責任の所在が不明確になり、結果として誰もやらない、あるいは重複して非効率になる。

視点3:指揮命令系統の明確さ。

誰が誰に報告し、誰が誰の業績に責任を持つのか。この指揮命令系統(レポーティングライン)が明確であることは、組織運営の基本です。

中小企業では、社長が全部門に直接指示を出す「フラットすぎる組織」になっていることがあります。社長の意思決定がボトルネックになり、組織のスピードが落ちる。一方で、階層を増やしすぎると、情報伝達が遅くなり、現場の声が経営に届かなくなる。自社の規模に適した階層数を見極めることが重要です。

視点4:管理スパン(1人の管理者が管理する人数)の適正化。

1人の管理職が直接管理できる人数には限界があります。一般的に、5〜10名が適正とされます。管理スパンが広すぎると(例:1人の部長が20名以上を管理)、マネジメントの質が低下します。狭すぎると(例:1人の課長が2名を管理)、管理職が過剰になりコストが増大します。

視点5:将来の変化への対応余地。

組織は固定的なものではなく、事業環境の変化に応じて柔軟に変えていく必要があります。「今」だけでなく、「1年後、3年後にどのような組織が必要になるか」を考慮した設計にすることが重要です。

宇都宮市のある食品メーカー(従業員約120名)では、事業戦略の見直しに合わせて組織図を再設計しました。「今まで、組織図と事業計画を別々に考えていた。一緒に考えることで、『この事業を伸ばすなら、ここに人を厚く配置すべき』という議論が自然に生まれた」と経営企画の担当者は話します。


北関東の中小企業に適した組織形態のパターン

中小企業の組織形態には、いくつかのパターンがあります。自社の規模、事業内容、成長段階に応じて、適切なパターンを選択します。

パターン1:機能別組織。

営業部、製造部、管理部——というように、機能(職種)で部署を分ける形態です。最もオーソドックスで、従業員50〜200名程度の中小企業に適しています。機能ごとの専門性が高まりやすく、管理がしやすいという利点があります。

パターン2:事業部制組織。

複数の事業を展開している場合、事業ごとに独立した組織を設ける形態です。各事業部が営業・製造・管理の機能を持ち、事業部ごとに損益を管理します。事業間のシナジーは生まれにくいですが、各事業の責任が明確になります。

パターン3:マトリクス組織。

機能別の「縦のライン」と、プロジェクトや製品別の「横のライン」を組み合わせた形態です。柔軟性が高いですが、指揮命令系統が複雑になるため、中小企業には運用が難しいケースが多いです。

パターン4:チーム型組織。

固定的な部署ではなく、プロジェクトや課題ごとにチームを編成する形態です。小規模な企業や、業務内容が流動的な企業に適しています。

北関東の中小企業の多くは、パターン1の機能別組織が基本になるでしょう。ただし、事業が多角化している場合や、地理的に拠点が分散している場合は、パターン2やパターン3の要素を取り入れることも検討すべきです。

前橋市のある自動車部品メーカー(従業員約180名)では、3つの製品群を一つの組織で運営していましたが、製品群ごとに市場特性が異なるため、管理が難しくなっていました。各製品群を事業部として独立させ、営業と技術をそれぞれの事業部に配置したところ、「各事業部のリーダーが、自分の事業の損益を意識して動くようになった。以前は『全体で何とかなるだろう』という空気があったが、それが変わった」と社長は話します。


組織図設計の実践的なステップ

組織図を戦略的に再設計するための実践的なステップを示します。

ステップ1:事業戦略の確認。

まず、経営者と「今後3年間の事業の方向性」を確認します。どの事業を成長させるか、どのような能力を強化するか、どのような新しい取り組みを行うか。この方向性が組織設計の前提条件になります。

ステップ2:必要な機能の洗い出し。

事業戦略を実現するために必要な機能(営業、製造、開発、品質管理、人事、経理、総務、情報システムなど)を洗い出します。「現在ある部署」からスタートするのではなく、「必要な機能」からスタートすることがポイントです。

ステップ3:機能のグルーピング。

洗い出した機能を、関連性の高いものでグルーピングします。このグルーピングが「部署」の原型になります。

ステップ4:管理体制の設計。

各部署の管理者(部長、課長など)を誰にするか、管理スパンは適切か、レポーティングラインは明確かを検討します。

ステップ5:人材の配置。

設計した組織に、現在の社員を配置します。「必要な機能に対して、適切な人材がいるか」を確認し、不足がある場合は、採用・育成・配置転換で対応する計画を立てます。

ステップ6:組織図の可視化と共有。

設計した組織図を文書化し、全社員に共有します。各部署の役割、管理者、レポーティングラインを明確にします。

つくば市のある研究開発企業(従業員約70名)では、このプロセスを経営合宿で行いました。「経営陣3名で丸一日かけて、事業戦略の確認から組織図の設計まで一気通貫で議論した。普段は目の前の業務に追われて、組織の形をじっくり考える時間がなかった。合宿という非日常の環境で集中的に議論できたのがよかった」と社長は話します。


組織図を「生きた設計図」にする

組織図は、一度つくったら終わりではありません。事業環境の変化、社員の成長、新たな課題の発生——こうした変化に応じて、組織図を定期的に見直し、更新する仕組みが必要です。

仕組み1:年1回の組織設計レビュー。

少なくとも年1回は、組織図の設計レビューを行います。事業計画の策定や予算編成のタイミングに合わせるのが自然です。「来期の事業計画を実現するために、現在の組織で適切か」を検討します。

仕組み2:人事異動と連動させる。

人事異動は、組織を調整する機会です。単に「空いたポジションを埋める」のではなく、「組織全体の最適化」を考慮した異動を行います。

仕組み3:組織図と人材データを統合する。

各部署の人員数、年齢構成、スキル構成、後継者候補の有無——こうした人材データを組織図と統合して管理することで、組織の課題が見えやすくなります。「この部署は平均年齢が55歳で、3年以内に半数が定年退職を迎える」といった情報が、組織設計の判断材料になります。

組織図は、企業の「設計図」です。建物の設計図が建物の機能と安全性を決めるように、組織図は組織の機能と効率性を決めます。北関東の中小企業が、限られた人材で最大の成果を上げるためには、組織図を「ただの図」から「戦略的な設計図」に変えることが重要です。

その際に忘れてはならないのは、組織図の先にいるのは「人」だということです。どれほど合理的な設計であっても、そこで働く人が納得し、力を発揮できなければ意味がありません。組織の設計は、人の配置と育成とセットで考えるものです。数字と論理だけでなく、一人ひとりの社員の状況や気持ちにも目を向けながら、自社にとって最適な組織の形を探っていくことが大切だと思います。

0

経営視点で考える人事の実践力を磨きませんか?

書籍『「人事のプロ」はこう動く』著者による実践講座。現場で使える経営視点の人事力を身につけます。

関連記事

北関東の企業が「人事と現場の壁」を壊す方法
組織開発

北関東の企業が「人事と現場の壁」を壊す方法

人事がまた何か言ってきた現場のことをわかっていないのに、制度ばかり押しつけてくる——北関東の中小企業で、現場の管理職や社員からこうした声が上がっているケースは少なくありません。一方、人事担当者の側からも現場が協力してくれない制度を運用してくれない面談をやってくださいと言ってもやってくれないという声が

#採用#評価#研修
北関東の企業が「心理的安全性」のある職場を作る方法
組織開発

北関東の企業が「心理的安全性」のある職場を作る方法

うちの社員は、会議で全然意見を言わない問題が起きても、報告が遅い新しい提案が現場から出てこない——北関東の中小企業の経営者から、こうした悩みを聞くことがあります。社員のやる気がないのか、能力が足りないのか。そう考えてしまいがちですが、私は別の可能性を指摘したいと思います。それは心理的安全性の不足です。

#1on1#評価#研修
北関東の企業が「組織風土改革」を一過性にしない方法
組織開発

北関東の企業が「組織風土改革」を一過性にしない方法

風土改革をやろうと言って始めたが、半年で元に戻った——北関東の中小企業で、こうした経験を持つ経営者は少なくありません。社員研修を実施し、スローガンを掲げ、キックオフ大会を開き、一時的には組織の雰囲気が変わったように見える。しかし、日常業務に戻ると、いつの間にか元の空気に戻っている。

#1on1#評価#研修
群馬のIT企業がアジャイル組織で人事をどう設計するか
組織開発

群馬のIT企業がアジャイル組織で人事をどう設計するか

群馬県のIT産業は、近年着実に成長しています。高崎市、前橋市を中心に、受託開発、SaaS、組み込みソフトウェアなど、多様なIT企業が拠点を構えています。東京の大手SIerの下請けから脱却し、自社プロダクトの開発に舵を切る企業も出てきました。

#エンゲージメント#採用#評価